海藻コラム

週に 3 日は海藻を食べて! ~「海藻ファースト」の実践で虚血性心疾患の発症リスクが低くなる!?~

この1ヵ月あまり、「虚血性心疾患」という言葉を目にしたり耳にしたりする機会が多かったのではないでしょうか。
虚血性心疾患は、日本人の死因の約5%を占めており、決して珍しい病気ではありません。前兆なく発症して突然死を引き起こすこともある虚血性心疾患。一体どのような病気なのでしょうか。

虚血性心疾患とは?

心臓の筋肉に血液を送る冠動脈が狭くなったり、詰まったりするなどして起こる障害の総称。代表的な症例として狭心症や心筋梗塞が挙げられます。血液が足りずに前胸部などに痛みや圧迫感などをもたらしますが、自覚症状がないこともあります。
虚血性心疾患は、動脈硬化を主原因として発症します。この主原因である動脈硬化は、高血圧症・糖尿病・脂質異常症が主な要因となって起こりますが、高血圧症は食塩(ナトリウム)の過剰な摂取により、糖尿病は糖類の摂り過ぎによる食後高血糖により、脂質異常症は油脂の摂り過ぎによる食後高中性脂肪により、それぞれ引き起こされます。

発症につながりやすい要因

高血圧症や糖尿病、脂質異常症(総コレステロールや中性脂肪の高値)、喫煙が虚血性疾患の発症につながりやすいことが分かっています。肥満やストレスなども要注意。一度発症すると心筋がもろくなり再発しやすくなります。

予防のためにできること

発症を予防するには、禁煙や食生活の改善、適度な運動などが推奨されていますが、食生活の改善においては、「海藻」の摂取が重要な鍵となります。ワカメやコンブなどの海藻を食べると、虚血性心疾患の発症リスクが低くなることを、国立がん研究センターや筑波大学などの研究グループが発表しています(2019年10月)。その内容は、以下の通りです。(2019年10月11日 朝日新聞より引用)。

 1999年代以降、岩手や沖縄など9県に住む40~69歳の男女約8万6千人を追跡調査。食事に関する調査に協力してもらい、20年間の健康状態を調べた。(中略)男女ともに海藻を食べる頻度が高いほど、虚血性心疾患になるリスクは低くなった。

「ほとんど毎日」の群は、「ほとんど食べない」の群に比べてリスクが男性は0.8倍、女性は0.6倍に低くなった。

私たちの研究が明らかにしたこと

トリトンフーヅではこれまでの研究において、メカブなどの海藻の食前摂取(海藻ファースト※)により、食塩の過剰摂取を抑制すること(排塩効果)、食後血糖値の上昇を抑制することおよび食後中性脂肪の上昇を抑制することを明らかにしています。食塩摂取量の抑制は高血圧症の予防を、食後血糖値の上昇抑制は糖尿病の予防を、食後中性脂肪の上昇抑制は脂質異常症を予防することから動脈硬化が予防されます。さらには、その上流の虚血性心疾患の発症の抑制へとつながります。すなわち、「海藻ファースト」の実践こそが、虚血性心疾患の発症リスクを低下させる最善の方法なのです。

以上のことから、海藻をほとんど毎日食べるのがベストですが、それが難しい場合は、少なくとも1週間に3日「海藻ファースト」を実践すれば、虚血性心疾患の発症リスクの有意な低下が期待できます(栄養学博士 吉積)。

※海藻ファースト・・・食事の最初にメカブやモズクなどの海藻を食べる食事法