海藻コラム

免疫力を高める最高の食材

~海藻を食べて、ウイルス感染から身を守る~

2013年、理研ビタミンと武庫川女子大学の家森幸男教授らの研究グループは、特別養護老人ホームに入所する67歳から102歳の男女70名を2グループに分け、1つのグループにだけ300mgのメカブフコイダン(一般にスーパーで売っている生食メカブ1~2パック)を毎昼食時に摂食してもらいました。1ヶ月後、インフルエンザ3種混合ワクチン(H1N1: 新型A型、H3N2: 香港A型、B型)を接種し、その1カ月後に各種インフルエンザウイルスに対する抗体量を測定した結果、メカブフコイダンを食べたグループは全てのインフルエンザウイルス株に対して、抗体の産生量が増加しました。また、メカブフコイダンを食べたグループの人々は、免疫細胞の一つであるNK(ナチュラル・キラー)細胞の働きも高まっていて、メカブフコイダンの摂食がインフルエンザウイルスの感染による症状の重症化を防げる可能性があることを明らかにしました。

2020年4月、免疫グロブリンA(IgA)とウイルス感染に関して、大変興味深い報告がなされました。その報告によると、粘膜免疫の主体であるIgAが、各種アレルギー患者(スギ花粉、通年性鼻炎、アトピー性皮膚炎、喘息)では健常者に比べて有意に低いこと、スギ花粉症患者はインフルエンザワクチンの接種の如何に関わらず、健常者に比べて有意にインフルエンザ感染率が高いとのこと。IgAの役割の一つとして、上気道(気道のうち鼻から鼻腔、鼻咽腔、咽頭、喉頭までをいう)から侵入する細菌やウイルスに結合・凝集し排除をしています。すなわち、ウイルスや細菌が体内に入るのを防ぐ最初の関所です。ところが、このIgAの分泌に関して人種による差があることが、わかってきました。

IgAの分泌がないIgA欠損者は、ウイルスなどの気道感染が起こると、その20~30%が重篤な症状を呈します。さらに、驚くべきことは、国別に見たIgA欠損者の比率です。例えば、調査されている範囲では、アラビア半島は143人に1人、スペインは163人に1人、ナイジェリア252人に1人、イギリス875人に1人、ブラジル965人に1人、アメリカ223~1,000人に1人、中国2,600~5,300人に1人、日本14,840~18,500人に1人の割合で、IgA欠損者が存在しています。特に、白色および黒色人種は日本人と比べて数十から100倍近くもIgA欠損者が多く存在しています。偶然かもしれませんが、IgA欠損者の比率と今回の新型コロナウイルスの爆発的感染パターンとが酷似しています(図)。

新型コロナウイルスの感染者数とIgA(免疫グロブリンA)欠損者数との関係

カラダ全体の免疫細胞の数は1兆個以上。その70%は腸に集中しています。NK細胞の活性化もIgAの分泌もすべて腸において調節されています。一方、ブタや食肉鶏に海藻を与えると、腸内環境が改善し、IgAの分泌量が高まることが知られています。

これからも新型コロナウイルス感染の脅威はしばらく続くことが予想されます。                 普段の食事で海藻を食べて腸内環境を整えて腸を元気にしておくことが、ウイルス感染から身を守るうえで大切です。